就労継続支援A型事業所の開業・運営支援事業を行うセルフ・エー株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役:大島公一)のグループ事業所である「self-A・ハニービー押野」では、地域の清掃会社の理解と協力を得て、人手不足が深刻なホテル清掃分野でコアスタッフ(利用者)が活躍しています。
外国人材確保を急ぐ宿泊業界
訪日外国人の増加や、国際イベントが続き、ホテルの建設ラッシュとなり、宿泊業界は活況ですが、宿泊業界を支える側では深刻な人手不足に陥っています。厚生労働省の調査によれば、2018年1年間の産業別入職率・離職率は「宿泊業、飲食サービス業」が入職者・離職者ともに最も高くなっています【図1参照】。
今年4月の改正出入国管理・難民認定法(改正入管法)施行にともない、新設された宿泊分野の「特定技能1号」宿泊業の技能認定試験が初めて実施されました。この制度を活用し、2019年からの5年間で最大2万2千人の外国人雇用を見込んでいます。
宿泊業を支える客室清掃の人手不足
厚生労働省「一般職業紹介状況(平成31年3月分)」によれば、3月の有効求人倍率は1.63倍、その中で「清掃の職業」有効求人倍率は2.26倍となっています。ホテルの客室清掃業務は、チェックアウトが始まる午前10時頃からチェックイン午後3時頃までと時間が限定されます。また、季節や曜日で仕事量が変わり、調整が難しいことも課題となっています。客室清掃の人手不足は1人あたりの担当客室数の負担増に直結します。ホテルや清掃会社によっては、ロボット掃除機やIoT機器の導入などで業務効率の“カイゼン”で人手不足を解消しようという動きがありますが、ベットメイキングやアメニティの補充など自動化が難しいものも多く人手頼みです。
「ホテルの客室清掃」で活躍する障がい者
仕事をはじめた当初は、「話声がうるさい」「アメニティに汚れがある」といったクレームが出たこともありましたが、指示や情報共有の際は客室を離れる、チェックスタッフの人数を増やすなど随時対応することでクリアしていきました。次第に、個々の得意、不得意や仕事の進め方などの特徴を把握することができ、指導のポイントも明確になっていきました。今では、個々がやりがいをもって仕事に取組み、クレームが減ったのはもちろん、作業できる部屋数も少しずつ増えています。
慢性的に人手不足で、需要がある仕事ですので、コアスタッフ(利用者)の体力的に無理のない運用ができると判断できれば、今後軸となる仕事としていきたいと考えています。
仕事を依頼するにあたり、事前に清掃用具の説明や作業マニュアルの冊子を作成しました。さらに、事前に経験者による実演確認を実施した上で、現場に入ってもらいました。コアスタッフ(利用者)さん個々の能力や仕事を覚える速度などまちまちではありますが、帯同いただく職員の方が根気よく指導していただいているので、非常に助かっています。ホテルの客室清掃の仕事は、土日祝日が多くなりますので、今後こうした曜日も引き受けていただけることを期待しています。
これまで一作業工程としての簡単な清掃は経験したことがありましたが、清掃をメインとする仕事は初めて挑戦です。客室清掃の仕事は、ホコリ、水垢、毛髪など目につく汚れを1つでも残すとクレームにつながるので、とにかくチェックに気を使わなければならないのが大変だと感じています。しかし、「人手が足りない中手伝ってくれて助かる」「ありがとう」といった言葉を聞くとやりがいを感じます。
「清掃の職業」で活躍する障がい者
セルフ・エーグループ各事業所のコアスタッフ(利用者)では、アパート、マンション、ビルの清掃や牛舎の寝わら清掃などで活躍しています。こうしたの取り組みや知見をグループで共有し、全国にある54事業所、約1,500名の障がい者ネットワークを活かし、様々な分野で新たな仕事を生み出していきたいと考えています。これからも地域の企業や人、コアスタッフ(利用者)、セルフ・エーの三者がそれぞれに幸せな形を模索してきます。
【図1】厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果」