障がい者の就労支援を行うセルフ・エー株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役:大島公一)は 現在、就労継続支援A型事業所※1を中心に66事業所※2を展開し、全国で約1,500名(延べ2,300名)の 障がい者雇用ネットワークを構築しています。
今回のニュースレターでは、働き方の柔軟化を表す「在宅勤務」「時差出勤」「テレワーク」「ワークシェアリング」のキーワード別にウィズコロナ時代の障がい者雇用について考えます。
在宅勤務・時差出勤 通勤のストレス軽減で働きやすくなる人も
厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」※3によれば、民間企業(45.5人以上規模の企業:法廷雇用率2.2%)の雇用障がい者数は56万608.5人で対前年比4.8%増、法定雇用率達成企業の割合は48%で前年比2.1ポイント上昇といずれも過去最高を更新しました。しかし7月1日、日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)では、新型コロナウイルスの影響により、リーマンショック後の2009年6月調査以来の低水準。多くの業種でマイナス指数となっており、障がい者の雇用や就労の現場にも様々な影を落としています。一方で、在宅勤務やテレワーク、時差出勤など柔軟な働き方の実施が広まるきっかけにもなりました。
A型事業所やB型事業所では、送迎対応をしているところがあります。それは、通勤が不安な人や、強いストレスになる人がいるためです。在宅勤務や時差出勤は、そうした不安要素を軽減することができる可能性があり、活躍の場が広がる人が増えることが期待できます。
テレワーク 在宅やサテライトオフィスでの勤務による柔軟な働き方が事業継続性(BCP)の確保につながる
一般社団法人テレワーク協会によれば、テレワークとは情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方。テレワークの効果として7つに集約できるとしています。
1. 事業継続性の確保(BCP)
非常災害時やパンデミック(感染症流行)時における事業継続
2. 環境負荷の軽減
通勤減少、オフィスの省電力化による電力の消費(量)、CO2排出量の削減
3. 生産性の向上
顧客への迅速・適格な対応
計画的、集中的な作業実施による業務効率の向上
4. ワーク・ライフ・バランス実現
家族と過ごす時間、自己啓発などの時間の増加(仕事と生活の調和)
5. 優秀な社員の確保
育児期・介護貴等の社員への働きやすい環境の実現による離職の防止(継続雇用)
6. オフィスコスト削減
オフィススペース、ペーパーコスト、通勤・交通コストの削減
7. 雇用創出と労働力創造
退職した高齢者、通勤が困難な障がい者、遠方居住者などの新規雇用の創出
出典:一般社団法人テレワーク協会(https://japan-telework.or.jp/)
なかでも、事業継続性の確保(BCP)については、ウィズコロナ時代の企業の在り方として、関心が高まっています。テレワークの効果を有効に利用し、法定雇用率※4の達成を目指している企業へのソリューションとして、当社は「障がい者向けサテライトオフィスサービス」を提供しています。当サービスでは、障がい者の働く環境を整えたオフィスを当社が用意し、これまで培ってきた障がい者就労マネジメントを提供することで、定着率アップが見込めます。また、全国約1,500名の人材ネットワークから、業務に適性の高いメンバー(利用者)※5をアサインすることができるのも強みです。
さらに当社がA型事業所を展開していますので、雇用前のマッチングテストとして、実際に担当して欲しい業務をA型事業所にアウトソーシングすることで、実際の業務レベルでの適性を見ることも可能です。
ワークシェアリング ノンコア業務はアウトソーシングで効率化を図る
ワークシェアリングは“一定の雇用量を、より多くの労働者の間で分かち合うことを”という考え方で、以下の4タイプに分類されています。
(1) 雇用維持型(緊急避難型)
一時的な景況の悪化を乗り越えるため、緊急避難措置として、従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。
(2) 雇用維持型(中高年対策型)
中高年層の雇用を確保するために、中高年層の従業員を対象に、当該従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。
(3) 雇用創出型
失業者に新たな就業機会を提供することを目的として、国または企業単位で労働時間を短縮し、より多くの労働者に雇用機会を与える。
(4) 多様就業対応型
正社員について、短時間勤務を導入するなど勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめとして、より多くの労働者に雇用機会を与える。
出典:厚生労働省「ワークシェアリングに関する調査研究報告書」
このうち(3)雇用創出型(4)多様就労対応型の2タイプが障がい者雇用にも活用できる考え方です。従来より世界の先進国の中で、日本は一人当たりの労働時間が長く、休暇が短いという傾向がありました。そうした働き方が過労死やうつ病を引き起こすなどの歪を生んできました。当社のA型事業所等にで就労するメンバー(利用者)※5にも、一般就労時に様々な要因によって、今は障がい者となっている人が多くいます。そうした負の連鎖を断ち切るための1つの方法として、ワークシェアリングは有効だと言えます。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進 全ての人が働きやすい社会を目指して
各企業で障がい者雇用を検討するにあたり、共通の課題となるのが以下の3点です。
① お願いする仕事の内容 個々の得意・不得意をどのように把握するか
② 誰がマネジメントするか 障がい者のマネジメント経験を有する人が社内にいるか
③ 働く環境をどのように整えるか 雇用する人によって必要な環境が異なる
当社は、これらの課題を解決するソリューションを提供できるノウハウを構築しています。障がい者雇用を促進したいと考える企業には、毎年9月は「障害者雇用支援月間」として、全国各地で障害者雇用支援月間ポスター原画入賞作品展示会や表彰式、障がい者雇用に関する講演会などが開催されます。これを機に様々な企業で障がい者雇用の機運が高まり、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が加速することで、誰もが働きやすい社会に近づくと確信しています。
※1 障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスの1つとして、一般企業への就職が困難な障がい者へ働く機会の提供を行う場所。企業などから依頼された仕事を担うためにスキル、知識の習得など必要な就労訓練を行います。A型事業所では、障がい者と雇用契約を結び、給料を支払います。これに対しB型事業所は非雇用の形式で、比較的障がいのレベルが重度の人が利用する傾向にあります。また、原則24カ月(2年間)の期間内で一般就労するために事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探しと定着のための支援を行う「就労移行支援事業」。他に、「就労定着支援事業」があります。
※2 2020年5月1日時点の事業所数。都道府県別の内訳は以下の通り。( )内は事業所数
青森県(1)、山形県(2)、茨城県(9)、群馬県(7)、埼玉県(2)、東京都(3)、神奈川県(3)、
新潟県(3)、石川県(10)、富山県(8)、福井県(1)、山梨県(3)、長野県(3)、三重県(1)、
京都府(1)、大阪府(6)、広島県(3)
※3 厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08594.html
※4 法定雇用率とは、一定数以上の労働者雇用している企業や地方公共団体を対象に、常用労働者のうち雇用すべき障がい者の割合を定めた基準のこと。現在の法定雇用率は国の機関2.5%、都道府県の機関2.5%、市町村の機関2.5%、都道府県等の教育委員会2.4%
※5 当社では、第10期(2019年9月)より事業所の利用者の呼称を、それまでの「コアスタッフ」から 「メンバー」と変更しました。