就労支援は、障害や難病のある人の「働きたい!」という気持ちを応援する障害福祉サービスです。名前を聞いたことがあっても、どのような制度なのか、その目的や内容までは知らない人も多いのではないでしょうか。

この記事では就労支援について解説します。就労支援の種類や内容だけでなく、就労支援を行う場所や利用方法などもあわせて紹介します。就労支援を利用してみたい人は参考にしてくださいね。

就労支援とは?

就労支援とは、2005年制定の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に基づいた障害福祉サービスのことです。身体障害・知的障害・精神障害や難病があり、働くことの難しい人が、就労のために必要な訓練を受け、安定して働き続けられるよう支援を行います。働くことを通して、日常生活だけでなく社会生活も含めて全体的に支援し、本人の自立へとつなげることが目的です。

ちなみに就労支援には、おもに以下の3種類の事業があります。

・就労移行支援事業

・就労継続支援事業

・就労定着支援事業

事業によって目的や内容が異なるため、状況にあったものを選ぶ必要があります。

就労移行支援事業

就労移行支援は、企業や公的機関などへの一般就労を目指す人を支援する障害福祉サービスです。一般就労に必要なスキルを身に着け、安定して働き続けられるようサポートします。利用者はスキルを身に着けるため、事業所へ通所を重ねるのが一般的ですが、状況によっては職場訪問・体験などを伴うこともあります。

施設により異なるものの、自己分析やマナー・挨拶の練習から仕事に必要な資格の勉強まで、サポート内容は多岐にわたります。利用者と雇用契約を結ぶ必要はなく、賃金は原則支払われません(一部事業所を除く)。年齢制限は原則18~65歳未満、利用期間は2年(最大1年の延長あり)と定められています。

就労継続支援事業

一方で就労継続支援事業は、企業や公共機関への一般就労や就労移行支援の利用が難しい人に向けた障害者福祉サービスです。就労移行支援事業が就労に必要なスキルの習得を目的としているのに対し、就労継続支援事業は働く機会の提供を目的としています。

就労継続支援事業にはおもに雇用型と非雇用型の2種類があります。どちらを利用するかは、本人の希望だけでなく、利用前の調査やヒアリングも踏まえて決められます。

雇用型(A型)は利用者と雇用契約を結び、働く機会を提供することが目的です。働くことでスキルを習得し、ゆくゆくは一般就労へと移行できるようサポートをしていきます。雇用契約を結び、賃金を受け取ることができるのも特徴です。年齢制限は原則18〜65歳未満で、利用期間の定めはありません。

非雇用型(B型)も企業や公共機関への一般就労や就労移行支援の利用が難しい人を対象としていますが、こちらは雇用契約が発生しません。雇用契約はないものの、賃金を受け取ることができます。事業所によるものの、一般的にA型よりも賃金が低い傾向にあります。年齢制限や利用制限の定めはありません。

就労定着支援事業

就労支援には移行・継続だけでなく、定着のための支援もあります。就労定着支援事業は、就労移行支援などをとおして一般就労し、6カ月間の職場定着サポート期間を終えた人を対象としています。就労先でより長く安定して働き続けられるよう、サポートを行う事業です。

具体的には、利用者が抱える問題を解決するための相談を受けたり、助言・指導などを行ったりします。年齢制限はないものの、利用期間は最大で3年までとされています。

就労支援事業を利用するには?

就労支援を利用するには、まず障害者福祉サービス受給者証(以下、受給者証)の申請・取得が必要です。この受給者証は自治体から交付されるものです。受給者証には、利用者の受けているサービスの内容や支給量(月に何回利用可能か)、有効期間などが記載されています。受給者証が交付されていないと、就労移行支援や就労継続支援といったサービスの利用ができないため注意しましょう。

受給者証を受け取るには?

自治体により対応は異なるものの、受給者証を受け取るためには、申請書類や医師の診断書または意見書をそろえて自治体の窓口で申請する必要があります。その後、自治体の職員によるヒアリングや調査を経て、就労支援の利用が適切かどうかの判断がされます。

自治体によっては、受給者証の本支給が決まる前に事業所を利用し、継続してそのサービスを利用することが妥当かどうかを判断するための暫定支給決定期間を最長2ヵ月以内で設ける場合も。

これらのプロセスを経て受給者証を受け取ることができます。発行された受給者証をもとに事業所との雇用契約を結び、就労支援の本格的なスタートです。

障害者手帳との違い

受給者証と同じく、障害者手帳も障害のある人が取得できるものです。就労支援を受けようとしている人の中には、すでに障害者手帳を持っているケースもあるでしょう。

しかし障害者手帳を持っているだけでは、就労支援を利用できません。障害者手帳は、受給者証とは発行する機関や目的が異なるためです。障害者手帳を取得していない場合でも、受給者証を受け取ることができるケースもあることを知っておきましょう。

就労支援事業所の利用料

なお、就労支援事業所を含む障害福祉サービスの利用には利用料がかかります。利用者が全額負担するのではなく、利用料のうち9割を自治体が負担し、残りの1割が自己負担です。

その上で、自己負担分にも上限額が定められています。例えば生活保護を受給する世帯や市町村民税が非課税の世帯は、自己負担額は0円です。それ以外の世帯の人でも自己負担額がかからない場合もあるため、自治体窓口や事業所で確認しましょう。

就労をサポートする施設は他にも!

就労支援にあたる就労移行支援や就労継続支援、就労定着支援以外にも、障害のある人の就労をサポートする施設はたくさんあります。

職業紹介所にあたるハローワークは代表的な例のひとつです。一般的な職業紹介・相談窓口に加え、障害のある人を対象とした障害者専用窓口が設置されています。障害のある人が就職できるよう、専門的な知識を持つスタッフが対応しています。障害者手帳を取得していなくても利用可能です。

ほかにも、障害のある人に対して就職相談や職場復帰支援などを幅広く行う障害者職業センターや、発達障害のある人が日常生活について相談できる発達障害者支援センターなども心強い施設です。就労支援事業所以外も積極的に利用し、就労へとつなげましょう。

まとめ

就労支援では、移行・継続・定着と状況にあわせたサービスが用意されています。障害や難病が理由で働くことに困難がある場合や、働くためのスキルや働く機会が欲しい場合には、就労支援事業所の利用を検討してみましょう。長く安定して働き続けるための手厚いサポートが受けられるはずです。